ジョゼフィン・テイの名作「時の娘」を読みました。

個人的にはリチャード三世というと、大和和紀さんのマンガ「KILLA」で見知った印象が強いのですが、あれこそがシェイクスピアの作り上げた怪物リチャード三世なわけです。


金髪の一族に在って、黒髪に生まれ、肢体不自由というコンプレックス。兄のエドワード四世健在時には野望を隠し、兄の死によって表舞台に出るや王位継承ライバルである兄の子供は殺し、非道な暴政を敷く。その闇をヘンリー七世が打ち倒し正しきチューダー朝が始まる・・・・・・

201704050934304e5.jpg

上の絵は、ロンドン塔で殺されるのを怯えて待つ王子達なのですが・・・・・

チャイナの歴史を学んでいると「そのパターンは、ちょっと待てよ」という気になりますよね。
チャイナの歴史書が散々やって来た前王朝を貶めて、現政権の正当性を強調するアレじゃないでしょうか?


以下はネタバレあるので興味持った方は読まないで下さいね。








さて、ジョゼフィン・テイが作り出した名警部グラントは足の複雑骨折でベッドの上。することもなく暇をもてあましています。
人間観察に並々ならぬ興味を持つグラント警部が目に留めた肖像画。
それが一番最初に載せた肖像画です。

先入観なしでこの肖像画を見て、この顔は「判事側」と考えます。
彼はそれまで裁かれる犯罪者側か裁く判事側かを人相から分類する習慣があって、それは外れないとか・・・・

それが肖像画の裏の名前を見て驚くわけです。
希代の悪党の名前「リチャード三世」なのですから。

そこで肖像画の顔を改めて見直し、やはり納得のいかない警部は歴史書を集め、後世の物語の創作者を突き止め、リチャード三世が犯罪を犯す必要も、また事件当時はそんな話も出ていなかった裏付けを見つけます。

黒幕はむしろヘンリー七世の方ではないのか?
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グラント警部はやっていませんが、上のヘンリー七世の肖像画を見ると、こっちの方が悪そうな・・・・・・

歴史は勝者によって書き換えられるお手本です。
もちろん「時の娘」は推理小説で学問書ではありません。どこまで正確かは、元々英国史に詳しくない身では判断しかねます(英国史に詳しくないので、なかなか読み進めにくい部分も多々あります。イギリス人なら常識として語られているところは分かりにくかったりする)。

最後に判明するのがリチャード三世の名誉回復が、チューダー朝が途絶えた後、さっそく始まっていて17世紀・18世紀・19世紀ともそうした論文が発表されているとか。
しかし、20世紀にはそうした発表はなく、シェークスピアのリチャード三世が固定化されている・・・・・・(実際にはモアという方の歴史書が元ですけど)

これは恐ろしい話で。
日本の――旧日本軍の話を思い出させます。
実際には通常の戦闘行為と占領の中で出たであろう南京陥落時の非戦闘員の被害。
虐殺命令や三光作戦(なぜに日本軍がチャイナの言葉の用法を利用するのか?)は東京空襲や原爆投下と釣り合いを取らせるために出てきた話のようですし、新聞に大きく報じた本田勝一氏も取材したのではなく、提供されたもの 調査なしに紙面の載せただけだと言っているとか。

ところが世界的流行作家の村上春樹氏(カエルの楽園風に言うと語り屋)の最新作「騎士団長殺し」ですか。
その中で登場人物に「日本軍は南京で40万人殺した」と語らせているそうです。
チャイナでの売り上げを伸ばすためとか、チャイナの後押しでノーベル賞狙いに来たとか揶揄されていますが、検証もなしに議論のある事象を確定事項のように書くのは困りものです(しかも40万人は人数の点では増えているし)。

実は私は「ダンスダンスダンス」までは村上春樹氏の著作はほとんど読んでいたのですが(元ハルキストでしょうかね)、それ以降は読まなくなりました。
だから作品の評価を出来る立場ではない(読んでないからネ)ですが、広く読まれる小説の記述で不正確なことが事実であるかのように流布されては・・・・・

シェークスピアの歴史作品は歴史としては要注意で、英国王室についての誤解にもなります。
ヨーロッパ人には常識なのかも知れませんが、百年戦争頃までの英国王はフランスで一は貴族に過ぎないとか。
だから獅子心王リチャードが英国に帰らないわけです。
「田舎で王様ぶっているより、都会での生活が好き」と言ったところ?
フランスでの領地を失うと、仕方なく田舎の王様に甘んじるしかなくなった、という事情らしい・・・・・・

その、やや鬱屈した歴史観を払拭したのがシェークスピアと言うわけですから、おおぼら歴史観じゃありませんか!

あ、チャイナの四千年の歴史も似たようなものかな?

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